頭の体操 ‐命題論理2‐
弁護士ブログ
2013.02.12
前回に続いて,論理式でいろいろ考えてみたいと思います。
(前回)
頭の体操‐命題論理‐
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【設問】
①「彼は髪が黒い人である」
②「髪が黒い人は西洋人ではない」
③「朝食にパンを食べるならば西洋人である」
という前提が正しい場合,
(実際には正しくないかもしれませんがこの問題に限っては正しいと仮定します)
次のア~ウのうち,必ず正しいといえるのはどれでしょう。
ア「髪が黒い人は朝食にパンを食べる」
イ「朝食にパンを食べるならば彼ではない」
ウ「西洋人でないならば彼ではない」
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【解説】
第1 命題①と②をつなぐ
まず,「AならばB」,「BならばC」という命題が正しい場合,
「AならばC」という命題も正しいといえます。
図で示すと
「A→B→C」の場合,「A→C」も正しいとなります。
これに加えて,「CならばD」,「DならばE」という命題も正しい場合,
「CならばE」という命題も正しいこととなり,
「AならばC」,「CならばE」という命題も正しいこととなります。
その結果,
「AならばE」という命題も正しいという結論が導き出されます。
図で示すと
「A→B→C→D→E」となります。
要するに,
「A→B」,「B→C」と前提同士をつなぐことができれば,
「A→C」もつなぐことができるのです。
これを,問題文の命題に置き換えると,
①「彼(A)は髪が黒い(B)」,②「髪が黒い人(B)は西洋人でない(C)」という命題が正しいので,
「彼(A)は西洋人ではない(C)」という命題も正しいということになります。
第2 命題③の対偶を考える
次に,前回お話しした「対偶」を使います。
そうすると,問題文の命題
③「朝食にパンを食べるならば西洋人である」の対偶である
「西洋人でなければ朝食にパンを食べない」という命題も正しいことになります。
第3 命題①,②と命題③の対偶をつなぐ
以上の流れからすると,
「髪が黒い人(B)は西洋人ではない(C)」,「西洋人でなければ(C)朝食にパンを食べない(D)」
という命題がつながることとなり,
「髪が黒い人(B)は朝食にパンを食べない(D)」という命題も正しいことになります。
その結果,
「彼(A)→髪が黒い人(B)→西洋人ではない(C)→朝食にパンを食べない(D)」
がつながることとなり,
「彼(A)は朝食にパンを食べない(D)」という命題も正しいことになります。
第4 もう一度対偶で考える
ここまでくれば,もう少しです。
さきほど導き出された
「彼(A)は朝食にパンを食べない(D)」の対偶を考えると,
「朝食にパンを食べるならば彼ではない」という命題が出てきます。
ここで,
「彼(A)は朝食にパンを食べない(D)」という命題は正しいということなので,
その対偶である
「朝食にパンを食べるならば彼ではない」という命題も正しいということになります。
この命題は
設問の選択肢「イ」と同じですね。
他の選択肢も見てみると,
まず,
ア「髪が黒い人は朝食にパンを食べる」について,
「髪が黒い人は朝食にパンを食べない」は正しいですが,
「朝食にパンを食べる」は必ずしも正しいといえないですね。
次に,
ウ「西洋人でないならば彼ではない」について,
「彼(A)は西洋人でない(C)」の対偶である
「西洋人ならば彼ではない」は正しいですが,
「ウ」とは異なりますね。
したがって,
設問の正解は「イ」となります。
今回は,前回よりもさらにややこしく分かりにくかったかもしれません。
なお,私が日頃から常にこのようなことばかり考えている
…というわけではありませんので,ご安心ください。