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「破産者マップ」問題について

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2019.03.25

先日、「破産者マップ」なるものが話題になりました。
これは、官報に掲載された破産者の氏名や住所を、インターネット上の地図上にまとめたとされるものです。「破産者マップ」は、個人情報保護委員会からの行政指導を受け、作成者が既に削除しています。
ただ、作成者のSNSにおける投稿を見ると、自身の行為がなぜ問題なのか、明確には認識していないようです。

今回は、「破産者マップ」が破産法との関係でなぜ問題なのか、考えたいと思います。

 

「破産者マップ」の問題性(破産法との関係から)

破産法は、裁判所が破産手続開始決定をしたときは、直ちに、破産手続開始の決定等について、官報で公告する旨を規定しています(破産法第32条1項1号、10条1項)。この破産手続開始決定の主文には、破産者の氏名が含まれます。

では、官報で公告する趣旨は、どのようなものでしょうか。
破産手続が開始すると、破産債権の届出・調査・確定を経て、債務者の総財産が金銭化され 、多数の債権者に対し、債権額と順位に応じ配分されます(同時廃止の場合を除く)。したがって、破産手続開始の事実は、債権者にとって極めて重要な事実です。また、法人の破産を考えればわかるように、破産手続の開始は、破産した法人の労働者、取引先など、様々な利害関係者に影響を及ぼします。

こうした破産手続を進めるうえでは、債権者等の利害関係者に対し、破産手続開始の事実を知る機会を確保する必要があります。そうすると、官報で公告する趣旨は、債権者等の利害関係者に対し、簡易迅速な手段で破産手続開始の事実を知らせることにあると考えられます。

このような趣旨からすれば、官報で公告する目的は、破産者の利害関係者以外の者に対し、破産の事実を広く知らせることではありません。のみならず、「債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会を図る」(破産法第1条)という破産法の根本の趣旨からすれば、破産の事実が広範に知られる状態に置かれ、破産者の生活再生に支障が生じる事態は、到底容認されるものではありません。官報に掲載されているからといって「破産者マップ」を投稿した作成者の判断は、破産法の趣旨に反した誤った考えだったといえるでしょう。

 

誰もが技術的には容易に情報を広められるようになりました。だからこそ、その情報の持つ意味に遡り、公開してよいのか、(公開してよいとしても)どの範囲まで公開してよいのかについて、十分な考察が必要な時代になっていると思います。

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