案件種別

相続・高齢者問題
相続分野での2つの最高裁判決(平成28年12月19日決定/平成29年1月31日判決)

昨年末と今年初めに、相続分野で2つの画期的な最高裁判決(決定)が出されました。

1つ目は、預貯金債権が遺産分割審判の対象となる、という最高裁平成28年12月19日決定です。
常識的に、預貯金は遺産なのですが、長い間全国の裁判所において、預貯金が遺産分割審判の対象となることが否定されてきました。預貯金債権は、預貯金を金融機関に対して払戻請求できる権利であり、それは可分債権である(民法427条)から、相続発生と同時に法定相続分に従って、各相続人に帰属すると考えていました。

例えば、1000万円の預貯金を残して被相続人が亡くなられ、妻と子2人が相続したとしますと、妻が500万円、子がそれぞれ250万円ずつの預貯金を取得すると考えていたのです(遺言書があれば別)。かかる考え方は、金融機関に煩雑な事務処理を強いてしまうとか、預貯金しかめぼしい遺産がない相続案件において、特別受益や寄与分があっても考慮されないなど、大いに問題のある法解釈でした。

今回、最高裁判所は、不可分的要素のある預貯金債権は、相続発生と同時に法定相続人に自動的に帰属することなく、遺産分割協議(調停、審判)によってはじめて各相続人に帰属する、と判断しました。
預貯金債権以外の金銭債権については、従前どおり可分債権として遺産分割審判の対象とはならない、との考え方が最高裁判所の多数意見で示された訳ですが、今までもめたら全く融通の効かなかった遺産分割手続きが、今後は預貯金債権の分配をめぐっても争う余地が出てきた
わけです。

2つ目は、相続税対策のための養子縁組であっても、当該養子縁組は有効であるとの最高裁平成29年1月31日判決です。
第2審が、節税のための養子縁組であって、民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がない」に当たるとして、養子縁組が無効であると判断していたのを、最高裁は、「相続税の節税の動機と縁組をする意思とは、併存し得るものである。」と判示した上で、「専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても、直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう『当事者間に縁組をする意思がないとき』に当たるとすることはできない。」と判断しました。

皆さん、相続対策は法務、税務両面で、複雑な知識が要求される分野ですので、しっかりと専門家に頼んで、争いのない、経済的な相続対策を、しっかりと行ってまいりましょう。

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